出世

【リーダー必見】キングダムがビジネスに役立つの10の要素を知り経営・出世に役立てろ

サムネイル画像: 作画引用・出典 キングダム (原 泰久) 集英社 経営者やビジネスパーソンが仕事に役立つと評するキングダム!それはなぜか?そこに隠される10の理由・要素を解説。 世の中のビジネスパーソンから絶大な支持を得るキングダム。その背景には紀元前の中国、春秋七雄と呼ばれた7つの国家が群雄割拠する乱世の時代において、 中華統一という大義を掲げる若き国王と、戦争孤児の下僕だった主人公が天下の大将軍への成り上がりを夢見るストーリーが、現代経済を生きるビジネスパーソンに共感でき学べる点が多いところであろう。 経営者、起業家、役員・幹部のようなリーダーシップ・カリスマ性を発揮しなくてはならない人たちや、将来の処世を目標とする若手も含め様々な立場の人々に勇気と知恵・信条・考え方を教えてくれるキングダムの物語に含まれる、ビジネスに役立つ10の要素を解説する。 キングダムがビジネスに通じる10の要素 経営や組織運営において必要な様々な要素が存在するが、キングダムの物語でそこに通じる点は以下の10個であろう。 ビジョンの共有 信条の共有 動機付け 発信力 処世 戦略 右腕 人材配置 組織階層 経営と執行の分掌 経済社会でリーダーと呼ばれる人たちには命題的な要素が多いと思うだろう。それらをエピソードを交え1つ1つ見ていきたい。 1.ビジョンの共有 なぜやるのか?なんのためにやるのか?組織のトップがメンバーへその先の展望や理想を落とし込み、共感を得ることは、組織運営上非常に重要な要素である。 キングダムでは主人公の一人である秦国の若き王嬴政(えいせい)が、これまで誰も成しえなかった中国を統一国家にすることをビジョンとして語る場面が幾度となく登場する。500年以上続く血で血を洗う乱世を、中華統一という方法で終結させ平和をもたらすという展望を持ち、それがただの夢ではなく実現するための明確な手段や考え方も同時に持っている。 それを信じることができ、共感できるからこそ、秦国の武将・官僚たちは身を挺して行動する。 代表的なエピソードとして、物語に序盤に弟のクーデターによって王宮を追われた嬴政が山の民の女王楊端和(ようたんわ)へ協力を打診しに行った際に志を語り協力を得るシーンや、7国のうちの一国である斉の王ですら共感させ、味方につけるシーンがある。 また、主人公の信は自らを王の金剛の剣であると喩え、嬴政のビジョン実現のために戦っていることを自負する。 もともと王宮内の権力闘争の敵であった丞相呂不韋(りょふい)の筆頭家臣であった秦軍総司令の昌平君(しょうへいくん)も嬴政のビジョンに共鳴した一人だ。 嬴政が成人し権限を持つ前にそれを阻止したかった呂不韋は、太后をそそのかしクーデターを謀るも、昌平君は呂不韋から寝返りそれを鎮圧する。それにより呂不韋の権力は失墜する。 嬴政の確固たるビジョンに共感し、多くの仲間が共通目標を実現していくため協力していく姿を通してビジョンの共有が組織を動かすうえで非常に重要であると気づく。 2.信条の共有 信条とは、正しいと信じている価値観や考え方である。キングダムの時代背景は、現代の基本的人権に基づいた法治社会と異なり、権力構造もまちまちで無秩序や横暴も存在する時代だ。 1に記述したビジョンの共有においても、その手段の是非によっては人それぞれの価値観において相容れないこともある。 例えば嬴政が中華統一をビジョンとして掲げるが、その手段を呂不韋は「金」だと語る。金、つまり経済が人を治めると。それに嬴政は人の「光」だと反論する。また、後に斉王には「法」のもとに国家を治めるべきだと語る。一方で趙の李牧(りぼく)が7国同盟を提案するが、嬴政は現世代がこの世を去った後の時代にそれが継続する保証がないと、武力での統一を掲げる。将来の平和のために、一時的な武力の行使は是と語るのだ。 また信条を共有する代表的なシーンとしては、魏を攻める桓騎(かんき)の軍に信を大将とした飛信隊が従軍した際に、飛信隊の尾平が略奪と繰り返していた桓騎兵にそそのかされて敵国の村民の宝石を盗んだことが露見し隊を追放されてしまう。 信の初陣から、信を支えてきた尾平。その後、信は尾平へ自分が描く理想の大将軍像を語り、自らの信条のために隊の仲間へ色々と我慢させて申し訳ないと謝罪するが、尾平はそんな信の考え方に惚れているからこそみんな自分の意思で信と戦っているし、潤っていると伝え、絆が深まるのだった。 自らが正しいと信じる価値観を伝え、仲間がそれに共感するからこそ、ブレずに行動でき、ビジョンの実現を近づけるということを学ぶことができる。 3.動機付け 人を動かすためには何を行動の源泉にするのか?という動機付け(インセンティブ)が重要となる。特に経営や、組織マネジメントに関わるビジネスパーソンにおいては命題的なテーマだと言えるだろう。キングダムのストーリーの中には、いかにして人を率いて人が動くのか?という動機付けにまつわるエピソードが多く存在する。 主人公である信が百人将だった時代から数々の修羅場をくぐり抜けてきた古参の忠臣である渕(えん)は、魏の著雍を攻める際に困難な戦局で非常に重要なミッションを任される。他の武将と比較し凡庸な渕の抜擢を不安視しる声があるなか、古くから信を支えてきた責任感から、渕はそれを決死でやってのける。 また、同じく同郷で初陣から信と共に戦っていた尾平は、桓騎軍に従軍した際に桓騎兵が侵攻した敵国の村民から略奪や凌辱を繰り返す姿を目の当たりにする。桓騎兵は命をかけて戦っているのだから役得であると無法行為を正当化する。 結果そそのかされて尾平は飛信隊ではタブーであった盗みを働いて隊を追放されてしまうのだが、その後信と会話の際に飛信隊は心が潤っているから略奪や凌辱なんて必要ないんだ・みんな自分の選択と意思で信についていってるんだと語る。 同じ戦場でも自分がつかえる人間の信念への共鳴する人もいれば、金や欲望を満たすことを動機とする人もいることが垣間見える場面だ。 楊端和の右腕であるバジオウも、幼少期に楊端和に命を救われたことで楊端和を守り続けると決め、趙の遼陽攻略の際に絶体絶命になった楊端和を命をかけて窮地から救う。同じく、戦争遺児だった輪虎(りんこ)も、廉頗(れんぱ)に拾われたことを天命と信じ、自らを「廉頗の剣」と語りあらゆる戦場を戦い抜いてきた。 一方で、王弟成蟜(せいきょう)が飼い慣らした怪物ランカイは、子供のころから成蟜に恐怖を植え付けられて調教され成蟜の言うことはなんでも聞くようになり、信を阻む強敵となる。しかし、信に致命傷を与えられたことで最後は戦意を喪失して言う事を聞かなくなり、恐怖というインセンティブが継続しないことを物語っている。(ちなみにランカイはその後山の民に引き取られ、蕞の防衛戦では秦を守る力となった) 人が動く動機には大きく「恐怖・欲望・信念」と言われるが、あらゆる方法で動機付けをするシーンを通して、マネジメントへの学びを得られるだろう。 4.発信力 将来の展望、正しい価値観、人が行動するための動機、組織運営においてあらゆる要素を満たしていても、それを人々の前で力強くアウトプットできるかが重要である。言葉にして伝える。リーダーにとって必須スキルだ。 キングダムではさまざまな場面で強い発信力を持ったリーダーたちを描いている。 代表的なエピソードは、敵国5ヶ国が結集して秦を攻めた合従軍侵攻戦において、秦の都咸陽の目前にある蕞(さい)という城が趙軍に攻められた場面だ。蕞の陥落は事実上の秦国の敗北を意味する絶体絶命の戦局に、蕞は決定的に兵力が足りていなかった。最後の手段として王である嬴政自らが蕞に出向き、兵士でない一般の民へ共に戦うよう鼓舞する。 戦場に出たことのない民たちは最初は戸惑うも、王の強いメッセージに心を打たれ共に戦うことを決心する。民に語り掛ける嬴政の力強さ・言葉のチョイス・納得感、人を動かすための発信力の重要性を知ることができるシーンだ。結果、多数の民が命を落としたものの蕞を守り切り母国を守った。 秦王嬴政である よく聞いてくれ蕞の住民よ咸陽には敵を迎え撃つ準備がないつまりこの蕞が敵軍を止めることが出来る最後の城だ もう一度言う蕞 ここで敵を止めねば秦国は滅亡する 恐ろしいのは分かる敵は屈強でこちらは老人・女子供も多い戦えば多くの血が流れ多くの者が命を落とすであろうだが、そなたらの父もまたその父親も同じように血と命を散らして今の秦国を作り上げた 今の生活はその上に成り立つ降伏すれば敗れればそれらは全て無に帰し、秦の歴史はここで途絶える秦人の多くは虐殺され生き残った者も土地を奪われ列国の奴隷になり下がるであろうそなたらの子もまた次の子も それを止められるのはそなた達だけだ 秦の命運を握る戦場に共に血を流すために俺は来た530年続いてきた秦の存亡をかけた戦いだ必ず祖霊の加護がある これまで散っていった者達も必ず背を支えてくれる最後まで戦うぞ秦の子らよ 我らの国を絶対に守り切るぞ! 秦国 国王 嬴政 ※一部割愛(出典 キングダム (原 泰久) 集英社) 秦を代表する大将軍である王騎は、苦境において部下へいつも以上の実力を発揮するようコミットをさせる。しかし、後ろにはいつでもこの王騎がついていると自信をもたせる。 この声を聴く王騎軍の兵士に言い渡します 敵の数はおよそ十倍 ならば一人十殺を義務づけます敵十人を討つまで 倒れることを許しません皆 ただの獣のと化して戦いなさい いいですか ここから王騎軍の真骨頂ですこの死地に力ずくで活路をこじあけます 皆の背には常にこの王騎がついてますよ 秦国 大将軍 王騎(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 王騎のカリスマ性に多くを学んだ信も、上述の蕞防衛において、民が力の10割のうち20を出したのだから実力の20を出せと伝える。ただ自分は100を出すとけしかける。 はっきり言って民兵達は十持ってるうちの二十を出しきっただったら俺達は十持ってるうちの三十を出すちなみに俺は百を見せてやる! 秦国 武将 飛信隊リーダー 信(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 普段は明るく天真爛漫な若手武将で楽華隊を率いる蒙恬も、部下たちに自分の人柄を活かした発信をして部下を鼓舞する。隊の長所を伝えながら壮絶な決戦へ覚悟させ、長所を評し自信を持たせ、最後には「宜しく頼むよ みんな」とシリアスかつにこやかに伝える。 楽華隊!この隊の長所は気高く冷静な戦い方と血みどろの泥臭い戦い方両方ができることだそして今日は 後者だ知ってのとおり こういう乗りは好きじゃないがやっぱり 俺たちにしかできなことが 今目の前にある 今日はひどい死闘になるぞ悪いが宜しく頼むよ みんな 秦国 武将 楽華隊リーダー 蒙恬(出典 キングダム (原 泰久) 集英社) みなそれぞれがもった個性とカリスマ性を活かして、強いアウトプットをして人を動かすのだった。 5.処世 キングダムは、職位や立場に言及するシーンが多い。戦争孤児から大将軍を目指す主人公信だけでなく、ライバルの若武者たちも様々な功績を上げ、切磋琢磨しながら少しずつ出世を果たしていく姿が、経済社会の出世レースに通じる点が多いからかもしれない。 また、「何人を率いているのか?」、「どこまでの責任を負っているのか?」「どうすればその職位たる器なのか?(ただ強ければいいという訳ではない)」など職位に対する指標の明確さが描かれている点も、物語の中で処世が大きな要素を占めていることが分かる。 将軍を目指す信が、先に昇格した同世代の王賁や、臨時で将軍を任された同じく同世代の蒙恬を羨んだり姿に感情移入する。だが、その後信自身も将軍代理を任され見事勝利を掴むなど、追いつけ追い越せの出世劇を見せる。 天下の大将軍になるという明確な目標を持ち、着実に歩みを進める若手武将たち。それぞれの個性を活かしたオンリーワンの中に、唯一無比のナンバーワンを目指す姿に、リーダーを目指すビジネスパーソンの共感を呼ぶ。 6.戦略 キングダムがビジネスに通じる要素として、単なるバトル漫画でなく、あらゆる戦局で細かく戦略を描いている点がある。そのため武将だけでなく、軍師が繰り広げる頭脳戦も数多く描かれている。 ビジネスにおいても、人のスキルや能力を活かし、競合他社の弱点をつき、成功を掴むためには考え抜かれた戦略が重要となる。 例えば秦の将軍王翦(おうせん)は、「私は絶対に勝てる戦にしか興味がない」と豪語するように、いつも緻密に状況を把握し秦軍を勝利へ導く天才。武将にして知略で敵を追い詰める王翦は、敵将と一騎打ちをするシーンはキングダムの物語で一度も描かれていない。勝算なき戦いはしないというのは古代の兵法家である孫氏の兵法に通じる。 王翦が敵国趙を侵攻する上で要所となる難攻不落の鄴(ぎょう)城を攻略するために用いた作戦は、武力ではなく難民を誘導して鄴を兵糧攻めに遭わせるというものであった。全体戦略において圧倒的不利だった秦だったが、鄴が兵糧攻め遭うことで趙と形勢を互角に持ち込む。 一方で残虐で冷酷な将軍桓騎は敵を精神的に追い込む心理戦や、予測を上回った奇策で次々と敵将を葬る。趙の黒羊丘を攻略する際には、侵攻した土地の村人を虐殺し、その亡骸を勝利のネックとなっていた敵の勇将紀彗(きすい)に見せつけることで心理的に追い込み撤退させ、秦の損耗を最小化させ勝利した。 単に武力だけでなく、戦略により形勢を有利に持ち込んだり、戦わずして勝つなどあらゆる戦略で戦いを勝利へ導く点は、その手法の是非はともかくビジネスにも通じると言える。 7.右腕 経営においてリーダーは孤独である。自らの責任において選択・決断をしなくてはならず、組織下からはあらゆる経営判断材料が提示されるが、その是非の判断は最終的にリーダーの責任のもとで結論を出さなくてはならない。 だからこそ、トップに人生をコミットして有能な右腕として存在するナンバー2の存在は非常に重要となる。キングダムの名将たちにも有能な右腕の存在が描かれるシーンが多い。 その最たる例が、秦の六大将軍王騎の右腕を担い、共に戦場を渡り歩いてきた騰だ。 ユーモラスで個性的なキャラクターの騰だが王騎から絶大な信頼を得ており、部下からの信頼も厚く、王騎は死に際に軍の全権を騰へ委譲する。また、王騎の傍らで乱世を渡り歩いてきた経験を自らも自負している。騰の存在が王騎軍の強さを支えてきたことは間違いない。 また、山陽の攻略戦においては信を苦しめた勇将の輪虎。戦争遺児で死にかけていたところを廉頗に拾われた彼もまた廉頗の右腕として自らの人生を廉頗の剣として生きることにコミットし活躍する。 楊端和におけるバジオウ、藺相如(りんしょうじょ)における趙峩龍(ちょうがりゅう)・尭雲(ぎょううん)らも重要な右腕として描かれ、信にとっても羌瘣は自らにコミットしてくれている大事な右腕だろう。 8.人材配置 組織運営において、それぞれの適性や強みに合わせて人の配置を采配していくいわゆる適材適所は非常に重要である。有能な人材も適所に割り当てなければ強みが死んでしまう。 キングダムでは数々な困難な局面が訪れる都度、それに見合った人材を割り当てるシーンが描かれている。 例えば、韓を攻めていた秦はその隙をついて趙に馬陽を攻め込まれる。その迎撃に際して、嬴政と昌平君は圧倒的な武力を持つ蒙武を総大将にする思いきや、王騎を総大将に任命した。攻めが得意な蒙武に対して、迎撃戦のような守りが重要となる戦には守功双方を担える王騎が適任だと判断したのだった。結果、副将として従軍した蒙武は敵陣へ武力による突撃を図った末に謀略に嵌り絶体絶命の窮地に陥ることとなった。王騎は蒙武の救出に入った結果死すものの、秦は趙を退けることに成功する。 また山陽の武功により千人将へ昇格した信だったが、これまで隊の采配を担ってくれていた羌瘣が姉の仇討のために隊から離れていた間に全く戦に勝てなくなり降格の憂き目にあう寸前に陥っていた。そこに軍師学校で経験を積んだ河了貂が隊に戻ってきたことにより、河了貂の指揮によって成果を取り戻す。信の個の強さだけで武功を上げてきた訳ではなかったことが浮き彫りとなった。 多くの戦の中で、盤上の武将たちをそれぞれの個性に合わせてどう配置するかというシーンが描かれるキングダムの物語の中で、成果のために人材配置がいかに重要かを学ばされる。 9.組織階層 組織組成において階層構造をいかに形成するかが非常に重要となる。適切な組織階層が、教育や理念・戦略の連鎖・浸透を助ける。 物語の中で組織階層の構造が最初に語られるのは、信の初陣で魏と対決した蛇甘平原の攻略戦だ。国中から広く集められた兵卒たちは5人一組の伍を作り、その中のリーダーが伍長となり4人を率いる。伍を20組結集した100人を率いるのが百人将となり、そこから3人の百人将から形成される300人を率いる三百人将、千人将という具合に、武功に応じて率いる隊の規模が大きくなる。王弟のクーデターを鎮圧した際に共に闘った壁が千人将であることに末端の兵卒として従軍した信は驚くが、意に介さずに結果を出して一回の戦で百人将へと出世を果たす。 組織階層に対応して重要となるのが人事制度であるが、キングダムでは漫画の中で戦が終わる都度、「論功行賞」という武功の評定が王宮で行われ、武功に応じて財宝や土地・爵位・職位が与えられる。現代社会においても企業の人事・給与報酬査定により出世や基本給や賞与が評定されるシステムと同じであるから、ビジネスパーソンはキングダムの物語に共感を覚えるのだろう。また、羌瘣が同士討ちをした黒羊丘では、その罪を上官である信が咎められ、敵大将軍の慶舎(けいしゃ)を討ったものの懲戒処分として昇格を保留された場面も現代企業の評価制度・就労規則などに通じる。 信は下僕の出身ながら56巻の段階で将軍の前の五千人将まで上り詰めており、昇格する都度、武力だけでなく統率力や人材配置の術・人心掌握術などリーダーたる資質を高めていき、隊の中でもその考え方が連鎖浸透して隊全体が強化されていく姿が描かれている。信と同世代の王賁率いる玉鳳隊、蒙恬率いる楽華隊も、リーダーの昇格に応じて隊全体の組織階層が伸長し強い組織に変遷していく姿が描かれ、あらゆる角度から組織形成への学びを得ることができる。 そういった組織階層の重要性が多く語られるため、キングダムはビジネスパーソンに支持を受けるのだろう。 10.経営と執行の分掌 歴史活劇の漫画は戦場という現場での出来事ばかりにフォーカスすることが多いが、キングダムでは現場にいない王宮での出来事も多く描かれている。敵国の侵攻、攻略、またクーデターのような内部紛争、窮地が訪れる都度王宮の大臣や官僚たちが王と共にいかに対応するかを協議する姿や、その中にも内部の権力闘争によるジレンマも共に描かれる点は、現代経済の企業経営においても重なる部分が多い。 合従軍が侵攻してきた時にはいかに国防するかを王宮の武官たちが昼夜を問わず寝る間を惜しんでシミュレーションする姿が描かれていたり、中華統一のための趙国を降伏させるための戦略を軍総司令の昌平君が死に物狂いで考える姿なども印象的だ。昌平君は唯一の攻略策と思われた戦略を総大将の王翦へ授け、現場での不測の事態は王翦の現場判断に委ねる。実際に想定外の事態が起こるも、王翦はその知略を発揮し、現場レベルで代替戦略を打ち立てて趙を苦しめる。こういった運営サイドと執行現場との信頼関係・柔軟な対応は、経営と執行の分掌によるバランスの理想形であると言える。現場を無視した経営の押し付けや、執行の独走が起きると、組織全体の均衡が崩れて事態は失敗方向へ向かってしまう。 さらにビジネスパーソンからして胸アツな点は、王宮に留まる武官たちがいざという時には現場へ降りて戦い、そして圧倒的に強いというところだろう。嬴政の加冠の儀に乗じて咸陽で謀反が起きた際は陥落の瀬戸際で司令官の昌平君が配下の手練れと共に戦場へ出撃し、敵将のワテギを瞬殺し、信たちを驚愕させるシーンがある。現場でも現役武将に引けを取らずに戦える姿が、単なる机上論で戦略を講じている訳ではない根拠にもなるし、現場の信頼を掴む。 武官だけでなく文官も国力の向上に寄与している姿も物語の中で描かれている。元武官の昌文君は国内の治水事業に成果を出し、老臣の蔡沢は外交力で合従軍が発起した際には秦の真逆に位置する斉を辞退させたことで合従軍が戦力を秦へ一極集中できない状況を作ったり、最終的には王同士の会談をセッティングして他国の平定の暁には斉の自主降伏の密約を取り付けるのだった。こういった戦以外の国家運営努力においても王である嬴政を中心に実施されていることが描けれている点も、キングダムの魅力の一つだろう。 以上、キングダムがビジネスパーソンを魅了する10の要素でした!特に組織のリーダーやマネジメントに携わる人には学びが多い点がある程度ご理解いただけたかと思いますが、かいつまんで紹介しているため、ぜひ本編を実際に読んでもらいたいと思います。楽しく読めるビジネス本という観点からあらゆる立場のビジネスパーソンにおすすめです。