サムネイル画像: 作画引用・出典 キングダム (原 泰久) 集英社 キングダムを愛するあらゆる企業の経営レイヤーのビジネスパーソンたちをまとめ 様々な業界のベンチャー起業家や経営者・実業家からビジネスの教科書として活かせる評される国民的人気漫画キングダム。紀元前の中国、それぞれの個性と戦略を持った7つの国家が群雄割拠する乱世の時代が経営社会に置き換えれる点が多く、 中華統一というビジョンを掲げる若き国王と、下僕から天下の大将軍に成り上がるという目標をもった主人公信のピュアなマインドが経営者・起業家の心を揺さぶるのであろう。 今回はそんなキングダムを経営の役に立て愛してやまない経営レイヤーのみなさんを会社や運営サービスの紹介も合わせてまとめた。 株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 麻野 耕司 さん(※参考記事取材当時) ※現:People Tech Studios 代表 / Knowledge Work CEO まずは、BUSINESS INSIDERのこちらの記事でインタビューを受けている3社のボードメンバーのみなさん。 【参考リンク】キングダム経営論。ハマる経営者たちが「一番売れてるビジネス書」愛を熱トーク 人事コンサルティングや人材開発の定量可視化サービス”モチベーションクラウド”などで有名な株式会社リンクアンドモチベーション。 社内でもキングダムが推薦図書とされ、ビジネスを学ぶツールに一つとなっているという。 今だ一国も平定できておらず戦争を続ける中、秦王 嬴政が斉王 建王に統一国家を法治するビジョンを語り、事実上の降伏を約束するシーンは、現代のM&Aを彷彿とさせると語る。 競合企業へあってもビジョンやメリットを共有することで戦わずして取り込むことは、優れた経営者の戦略であるという。 株式会社CRAZY 代表取締役 森山和彦 さん ブライダル事業や企業のアニバーサリーイベント等を通した人事コンサルティングを独自のクリエイティビティで行う稀有な企業。 飛信隊の古参で信と同郷の尾平が、侵攻した敵国の村民から略奪・凌辱を繰り返してそれを正当化する桓騎軍と比較し、飛信隊は心が潤っているから満たされていると語るシーンが、現代の経済成長で人の心を満たす時代は終わり、その次の生きる意味・働く目的の必要性を説く。 株式会社Ginco CEO 森川 夢佑斗 さん 仮想通貨に特化した次世代の資産管理インターフェースを提供する、ブロックチェーン技術などを駆使した先端のフィンテック企業。 下僕から大将軍を目指す信は、現代の起業志望の学生に重なり、キングダム自体がスタートアップの成長ストーリーを彷彿とさせるという。 株式会社オトバンク 代表取締役 社長 久保田 裕也 さん 日経のデジタルベンチャー系メディア 日経XTRENDのこちらの記事でインタビューを受けているこちらの3社のボードメンバーのみなさん。 【参考リンク】企業成長の極意が凝縮 漫画『キングダム』が若手経営者の必読書に 書籍を音声コンテンツで提供する日本語オーディオブックのリーディングカンパニー。audiobook.jpを運営する企業。 経営論・組織論の哲学として孫氏や孟子に立ち返ることがあるが、人間臭いキングダムはより実践的な参考になると論ずる。 アソビュー株式会社 代表取締役 CEO 山野 智久 さん 休日に行きたい様々な国内のアクティビティーや体験・ワークショップを検索・予約できる情報メディアサイト「アソビュー」を運営する企業。 マネジメント理論を集約したビジネス書としての学びが多く、ストーリーそのものがベンチャー企業の成長物語に通じると語る。経営者仲間の中ではバイブルとのこと。 akippa株式会社 代表取締役社長 CEO 金谷 元気 さん 個人宅やマンションなどの空き駐車場をアプリで事前予約・決済ができるシェアリングエコノミーサービスakippaを運営する企業。 会社の経営陣はみな読んでいてボードメンバー同士の共通言語として機能すると評する。 株式会社FABRIC TOKYO CEO 森 雄一郎さん 日経ビジネスのキングダム経営学シリーズでは多くのスタートアップ経営者が経営に役立てていると語る。 【参考リンク】若き起業家が語り尽くした「僕たちは『キングダム』で経営を学んだ」 クラウドをはじめとしたオンラインの次世代テクノロジーを活用し生産と消費を直接結びつけるオーダースーツ販売。大量生産時代のアパレル業界を低コストにカスタムオーダーが楽しめるサービスを運営。 僅か14歳足らずで弟のクーデターで国を追われた嬴政が中華統一のビジョンを本気で掲げている点を重ね、スタートアップ経営者がビッグマウスでも自らを信じ、賛同者・協力者を増やして突き進む姿勢が大事だと論ずる。 秦の強力な敵国である趙軍のトップ李牧ですら「あなたのような王に仕えたかったと」と言わしめる嬴政の凄さはベンチャー経営者に勇気を与えるとのこと。 株式会社タウンWiFi(現:GMOタウンWiFi株式会社)CEO 荻田 剛大さん スマートフォンを地域に存在するフリーWi-Fiスポットに自動接続するアプリと、その接続情報を元にマーケティングにフィードバックするデータ分析サービスを提供する企業。 嬴政が連載を重ねるごとに成長を遂げ、ビジョンを叶える方法を模索し弱音を吐かずに諦めない姿。自らのビジネス経験と照らし合わせ、最終的なビジョン達成のためには最初の発想に固執せず柔軟に手段を変えていってもいいと感じるという。 株式会社スクールウィズ 代表取締役 太田 英基さん 世界32ヵ国、約4000校の語学学校/教育機関の情報が集まる国内最大級の留学・語学学校の検索サイトSchoolWithや日本語を学びたい留学生に日本語学校の口コミを提供するメディアNihonGO!などを運営。留学・語学教育とテクノロジーをかけあわせたサービスを提供している。 敵国の宰相である李牧が同盟を打診してきた際に、十分すぎる条件に対して趙の主要な城を1つおまけしてくれないか?と持ちかける呂不韋の図々しさと交渉力に、こういった人間が会社に一人でもいると相当助かると評する。 株式会社ミツカリ 代表取締役 表 孝憲 さん 早期退職の抑止などを目的とし、応募者の人物像と企業・組織の風土との相性を定量的に判定しミスマッチを防げる採用適性検査サービスミツカリを運営する企業。 キングダムで描かれている世界観はスタートアップ経営の状況と似ている。同じようにキングダムに登場するキャラクターたちが危機に直面し、それに果敢に挑み乗り越えようとする姿に励まされると語る。 株式会社空 代表取締役CEO 松村 大貴 さん ホテルや旅館の市場分析の効率化から価格設定の最適化を支援するPricetechサービスであるMagicpriceを運営するテクノロジー企業。 嬴政が好きで、嬴政と自分の間にあるギャップを埋めようとする想いが糧になっていると語る。 また、呂不韋のように媚びずにビジョンのためには全体最適を考える器の大きさもスタートアップに重要な資質であるかもしれないとのこと。 ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田 敏夫 さん 【参考リンク】『キングダム』主人公に学んだ、困難でも信念を貫く強さを持つこと 中間マージンをカットし、工場直結で消費者にファクトリーブランドのアパレルプロダクトを届けるファッションブランド「ファクトリエ」を展開。テクノロジーを活用しアパレルの流通を改革し、よりよい品質のプロダクトをよりよい価格でユーザーへ届けている。 意として自分の大好きなキングダが経営にどう生きているか考えたことはなかったが、改めるといくつかのシーンに後押しされたと振り返る。 信の飛信隊における言動からリーダーとしての信条を明確にすることや、大切な判断を自らの勇気で決断する重要性を学んだと語る。 株式会社マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介 さん 【参考リンク】『キングダム』飛信隊が教えてくれた強い”混合チーム”のつくり方 登録している銀行口座やクレジットカードのアカウント情報などから家計簿を自動作成し、お金の流れや資産状況を見えるかするアプリ「マネーフォワードME」を運営するフィンテック企業。その他、貯金や投資など資産形成をサポートするメディアやアプリなどお金にまつわる様々なサービスを提供。 登録している銀行口座やクレジットカードのアカウント情報などから家計簿を自動作成し、お金の流れや資産状況を見えるかするアプリ「マネーフォワードME」を運営するフィンテック企業。その他、貯金や投資など資産形成をサポートするメディアやアプリなどお金にまつわる様々なサービスを提供。 株式会社識学 代表取締役社長 安藤 広大 さん 【参考リンク】『キングダム』秦国王に学ぶ、法(ルール)で人を統治する重要性 組織マネジメント理論「識学」を用いて経営・組織コンサルティングやセミナー、分析や学習のウェブサービス、M&Aサービスなど様々なビジネスサービスを提供する企業。 識学のメソッドの観点からキングダムを読んでいるという安藤氏。それに当てはめると信のような前線に命を投じて圧倒的な強さを誇るチームは、トップが誰よりも営業実績を出している状況であるため本来は第一線から離れて部下の育成や環境づくりが重要と、自らの失敗経験から語る。一方で嬴政が法によって中華統一後の治世を図るシーンや李斯が法は人の願いと語る姿には共通点があるという。 株式会社東京プライズエージェンシー 代表取締役社長 三浦 崇典 さん 【参考リンク】『キングダム』は個の力で生きる時代の必読書だ インターネットやスマートフォンの普及で斜陽産業となった書店業界の中でひときわ個性を放ち、読書を通した新しいライフスタイル提案や体験型の店舗運営で拡大する天狼院書店を運営。 好立地に出店する大手書店チェーンと比較し、住宅地の一角に第一号店を出店した自分たちはキングダムでいう山の民に似ていると語る。人通りが多い場所ではない分、あえて足を運んでくれるお客さんを作らなくてはいけない課題の中で、他の書店にはない個性を発揮できたという。 株式会社ソラコム 代表取締役社長 玉川 憲 さん 【参考リンク】ソラコム社長が告白、『キングダム』を読んで起業を決意した IoT向けの無線通信プラットフォームをグローバルに展開するIT企業。多様な産業に活用され、これからも急速に拡大していくIoTデバイスの足回りを安定的かつセキュアに支える。 ”キングダムでは信が戦で命をかけて戦功を挙げて大将軍に近づいていくが(友人は死にまくり)、スタートアップで命をかけて戦っても死にはしないwと思った”と創業当時の心境を語る。 ecbo株式会社 代表取締役社長 工藤 慎一 さん […]
サムネイル画像: 作画引用・出典 キングダム (原 泰久) 集英社 経営者やビジネスパーソンが仕事に役立つと評するキングダム!それはなぜか?そこに隠される10の理由・要素を解説。 世の中のビジネスパーソンから絶大な支持を得るキングダム。その背景には紀元前の中国、春秋七雄と呼ばれた7つの国家が群雄割拠する乱世の時代において、 中華統一という大義を掲げる若き国王と、戦争孤児の下僕だった主人公が天下の大将軍への成り上がりを夢見るストーリーが、現代経済を生きるビジネスパーソンに共感でき学べる点が多いところであろう。 経営者、起業家、役員・幹部のようなリーダーシップ・カリスマ性を発揮しなくてはならない人たちや、将来の処世を目標とする若手も含め様々な立場の人々に勇気と知恵・信条・考え方を教えてくれるキングダムの物語に含まれる、ビジネスに役立つ10の要素を解説する。 キングダムがビジネスに通じる10の要素 経営や組織運営において必要な様々な要素が存在するが、キングダムの物語でそこに通じる点は以下の10個であろう。 ビジョンの共有 信条の共有 動機付け 発信力 処世 戦略 右腕 人材配置 組織階層 経営と執行の分掌 経済社会でリーダーと呼ばれる人たちには命題的な要素が多いと思うだろう。それらをエピソードを交え1つ1つ見ていきたい。 1.ビジョンの共有 なぜやるのか?なんのためにやるのか?組織のトップがメンバーへその先の展望や理想を落とし込み、共感を得ることは、組織運営上非常に重要な要素である。 キングダムでは主人公の一人である秦国の若き王嬴政(えいせい)が、これまで誰も成しえなかった中国を統一国家にすることをビジョンとして語る場面が幾度となく登場する。500年以上続く血で血を洗う乱世を、中華統一という方法で終結させ平和をもたらすという展望を持ち、それがただの夢ではなく実現するための明確な手段や考え方も同時に持っている。 それを信じることができ、共感できるからこそ、秦国の武将・官僚たちは身を挺して行動する。 代表的なエピソードとして、物語に序盤に弟のクーデターによって王宮を追われた嬴政が山の民の女王楊端和(ようたんわ)へ協力を打診しに行った際に志を語り協力を得るシーンや、7国のうちの一国である斉の王ですら共感させ、味方につけるシーンがある。 また、主人公の信は自らを王の金剛の剣であると喩え、嬴政のビジョン実現のために戦っていることを自負する。 もともと王宮内の権力闘争の敵であった丞相呂不韋(りょふい)の筆頭家臣であった秦軍総司令の昌平君(しょうへいくん)も嬴政のビジョンに共鳴した一人だ。 嬴政が成人し権限を持つ前にそれを阻止したかった呂不韋は、太后をそそのかしクーデターを謀るも、昌平君は呂不韋から寝返りそれを鎮圧する。それにより呂不韋の権力は失墜する。 嬴政の確固たるビジョンに共感し、多くの仲間が共通目標を実現していくため協力していく姿を通してビジョンの共有が組織を動かすうえで非常に重要であると気づく。 2.信条の共有 信条とは、正しいと信じている価値観や考え方である。キングダムの時代背景は、現代の基本的人権に基づいた法治社会と異なり、権力構造もまちまちで無秩序や横暴も存在する時代だ。 1に記述したビジョンの共有においても、その手段の是非によっては人それぞれの価値観において相容れないこともある。 例えば嬴政が中華統一をビジョンとして掲げるが、その手段を呂不韋は「金」だと語る。金、つまり経済が人を治めると。それに嬴政は人の「光」だと反論する。また、後に斉王には「法」のもとに国家を治めるべきだと語る。一方で趙の李牧(りぼく)が7国同盟を提案するが、嬴政は現世代がこの世を去った後の時代にそれが継続する保証がないと、武力での統一を掲げる。将来の平和のために、一時的な武力の行使は是と語るのだ。 また信条を共有する代表的なシーンとしては、魏を攻める桓騎(かんき)の軍に信を大将とした飛信隊が従軍した際に、飛信隊の尾平が略奪と繰り返していた桓騎兵にそそのかされて敵国の村民の宝石を盗んだことが露見し隊を追放されてしまう。 信の初陣から、信を支えてきた尾平。その後、信は尾平へ自分が描く理想の大将軍像を語り、自らの信条のために隊の仲間へ色々と我慢させて申し訳ないと謝罪するが、尾平はそんな信の考え方に惚れているからこそみんな自分の意思で信と戦っているし、潤っていると伝え、絆が深まるのだった。 自らが正しいと信じる価値観を伝え、仲間がそれに共感するからこそ、ブレずに行動でき、ビジョンの実現を近づけるということを学ぶことができる。 3.動機付け 人を動かすためには何を行動の源泉にするのか?という動機付け(インセンティブ)が重要となる。特に経営や、組織マネジメントに関わるビジネスパーソンにおいては命題的なテーマだと言えるだろう。キングダムのストーリーの中には、いかにして人を率いて人が動くのか?という動機付けにまつわるエピソードが多く存在する。 主人公である信が百人将だった時代から数々の修羅場をくぐり抜けてきた古参の忠臣である渕(えん)は、魏の著雍を攻める際に困難な戦局で非常に重要なミッションを任される。他の武将と比較し凡庸な渕の抜擢を不安視しる声があるなか、古くから信を支えてきた責任感から、渕はそれを決死でやってのける。 また、同じく同郷で初陣から信と共に戦っていた尾平は、桓騎軍に従軍した際に桓騎兵が侵攻した敵国の村民から略奪や凌辱を繰り返す姿を目の当たりにする。桓騎兵は命をかけて戦っているのだから役得であると無法行為を正当化する。 結果そそのかされて尾平は飛信隊ではタブーであった盗みを働いて隊を追放されてしまうのだが、その後信と会話の際に飛信隊は心が潤っているから略奪や凌辱なんて必要ないんだ・みんな自分の選択と意思で信についていってるんだと語る。 同じ戦場でも自分がつかえる人間の信念への共鳴する人もいれば、金や欲望を満たすことを動機とする人もいることが垣間見える場面だ。 楊端和の右腕であるバジオウも、幼少期に楊端和に命を救われたことで楊端和を守り続けると決め、趙の遼陽攻略の際に絶体絶命になった楊端和を命をかけて窮地から救う。同じく、戦争遺児だった輪虎(りんこ)も、廉頗(れんぱ)に拾われたことを天命と信じ、自らを「廉頗の剣」と語りあらゆる戦場を戦い抜いてきた。 一方で、王弟成蟜(せいきょう)が飼い慣らした怪物ランカイは、子供のころから成蟜に恐怖を植え付けられて調教され成蟜の言うことはなんでも聞くようになり、信を阻む強敵となる。しかし、信に致命傷を与えられたことで最後は戦意を喪失して言う事を聞かなくなり、恐怖というインセンティブが継続しないことを物語っている。(ちなみにランカイはその後山の民に引き取られ、蕞の防衛戦では秦を守る力となった) 人が動く動機には大きく「恐怖・欲望・信念」と言われるが、あらゆる方法で動機付けをするシーンを通して、マネジメントへの学びを得られるだろう。 4.発信力 将来の展望、正しい価値観、人が行動するための動機、組織運営においてあらゆる要素を満たしていても、それを人々の前で力強くアウトプットできるかが重要である。言葉にして伝える。リーダーにとって必須スキルだ。 キングダムではさまざまな場面で強い発信力を持ったリーダーたちを描いている。 代表的なエピソードは、敵国5ヶ国が結集して秦を攻めた合従軍侵攻戦において、秦の都咸陽の目前にある蕞(さい)という城が趙軍に攻められた場面だ。蕞の陥落は事実上の秦国の敗北を意味する絶体絶命の戦局に、蕞は決定的に兵力が足りていなかった。最後の手段として王である嬴政自らが蕞に出向き、兵士でない一般の民へ共に戦うよう鼓舞する。 戦場に出たことのない民たちは最初は戸惑うも、王の強いメッセージに心を打たれ共に戦うことを決心する。民に語り掛ける嬴政の力強さ・言葉のチョイス・納得感、人を動かすための発信力の重要性を知ることができるシーンだ。結果、多数の民が命を落としたものの蕞を守り切り母国を守った。 秦王嬴政である よく聞いてくれ蕞の住民よ咸陽には敵を迎え撃つ準備がないつまりこの蕞が敵軍を止めることが出来る最後の城だ もう一度言う蕞 ここで敵を止めねば秦国は滅亡する 恐ろしいのは分かる敵は屈強でこちらは老人・女子供も多い戦えば多くの血が流れ多くの者が命を落とすであろうだが、そなたらの父もまたその父親も同じように血と命を散らして今の秦国を作り上げた 今の生活はその上に成り立つ降伏すれば敗れればそれらは全て無に帰し、秦の歴史はここで途絶える秦人の多くは虐殺され生き残った者も土地を奪われ列国の奴隷になり下がるであろうそなたらの子もまた次の子も それを止められるのはそなた達だけだ 秦の命運を握る戦場に共に血を流すために俺は来た530年続いてきた秦の存亡をかけた戦いだ必ず祖霊の加護がある これまで散っていった者達も必ず背を支えてくれる最後まで戦うぞ秦の子らよ 我らの国を絶対に守り切るぞ! 秦国 国王 嬴政 ※一部割愛(出典 キングダム (原 泰久) 集英社) 秦を代表する大将軍である王騎は、苦境において部下へいつも以上の実力を発揮するようコミットをさせる。しかし、後ろにはいつでもこの王騎がついていると自信をもたせる。 この声を聴く王騎軍の兵士に言い渡します 敵の数はおよそ十倍 ならば一人十殺を義務づけます敵十人を討つまで 倒れることを許しません皆 ただの獣のと化して戦いなさい いいですか ここから王騎軍の真骨頂ですこの死地に力ずくで活路をこじあけます 皆の背には常にこの王騎がついてますよ 秦国 大将軍 王騎(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 王騎のカリスマ性に多くを学んだ信も、上述の蕞防衛において、民が力の10割のうち20を出したのだから実力の20を出せと伝える。ただ自分は100を出すとけしかける。 はっきり言って民兵達は十持ってるうちの二十を出しきっただったら俺達は十持ってるうちの三十を出すちなみに俺は百を見せてやる! 秦国 武将 飛信隊リーダー 信(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 普段は明るく天真爛漫な若手武将で楽華隊を率いる蒙恬も、部下たちに自分の人柄を活かした発信をして部下を鼓舞する。隊の長所を伝えながら壮絶な決戦へ覚悟させ、長所を評し自信を持たせ、最後には「宜しく頼むよ みんな」とシリアスかつにこやかに伝える。 楽華隊!この隊の長所は気高く冷静な戦い方と血みどろの泥臭い戦い方両方ができることだそして今日は 後者だ知ってのとおり こういう乗りは好きじゃないがやっぱり 俺たちにしかできなことが 今目の前にある 今日はひどい死闘になるぞ悪いが宜しく頼むよ みんな 秦国 武将 楽華隊リーダー 蒙恬(出典 キングダム (原 泰久) 集英社) みなそれぞれがもった個性とカリスマ性を活かして、強いアウトプットをして人を動かすのだった。 5.処世 キングダムは、職位や立場に言及するシーンが多い。戦争孤児から大将軍を目指す主人公信だけでなく、ライバルの若武者たちも様々な功績を上げ、切磋琢磨しながら少しずつ出世を果たしていく姿が、経済社会の出世レースに通じる点が多いからかもしれない。 また、「何人を率いているのか?」、「どこまでの責任を負っているのか?」「どうすればその職位たる器なのか?(ただ強ければいいという訳ではない)」など職位に対する指標の明確さが描かれている点も、物語の中で処世が大きな要素を占めていることが分かる。 将軍を目指す信が、先に昇格した同世代の王賁や、臨時で将軍を任された同じく同世代の蒙恬を羨んだり姿に感情移入する。だが、その後信自身も将軍代理を任され見事勝利を掴むなど、追いつけ追い越せの出世劇を見せる。 天下の大将軍になるという明確な目標を持ち、着実に歩みを進める若手武将たち。それぞれの個性を活かしたオンリーワンの中に、唯一無比のナンバーワンを目指す姿に、リーダーを目指すビジネスパーソンの共感を呼ぶ。 6.戦略 キングダムがビジネスに通じる要素として、単なるバトル漫画でなく、あらゆる戦局で細かく戦略を描いている点がある。そのため武将だけでなく、軍師が繰り広げる頭脳戦も数多く描かれている。 ビジネスにおいても、人のスキルや能力を活かし、競合他社の弱点をつき、成功を掴むためには考え抜かれた戦略が重要となる。 例えば秦の将軍王翦(おうせん)は、「私は絶対に勝てる戦にしか興味がない」と豪語するように、いつも緻密に状況を把握し秦軍を勝利へ導く天才。武将にして知略で敵を追い詰める王翦は、敵将と一騎打ちをするシーンはキングダムの物語で一度も描かれていない。勝算なき戦いはしないというのは古代の兵法家である孫氏の兵法に通じる。 王翦が敵国趙を侵攻する上で要所となる難攻不落の鄴(ぎょう)城を攻略するために用いた作戦は、武力ではなく難民を誘導して鄴を兵糧攻めに遭わせるというものであった。全体戦略において圧倒的不利だった秦だったが、鄴が兵糧攻め遭うことで趙と形勢を互角に持ち込む。 一方で残虐で冷酷な将軍桓騎は敵を精神的に追い込む心理戦や、予測を上回った奇策で次々と敵将を葬る。趙の黒羊丘を攻略する際には、侵攻した土地の村人を虐殺し、その亡骸を勝利のネックとなっていた敵の勇将紀彗(きすい)に見せつけることで心理的に追い込み撤退させ、秦の損耗を最小化させ勝利した。 単に武力だけでなく、戦略により形勢を有利に持ち込んだり、戦わずして勝つなどあらゆる戦略で戦いを勝利へ導く点は、その手法の是非はともかくビジネスにも通じると言える。 7.右腕 経営においてリーダーは孤独である。自らの責任において選択・決断をしなくてはならず、組織下からはあらゆる経営判断材料が提示されるが、その是非の判断は最終的にリーダーの責任のもとで結論を出さなくてはならない。 だからこそ、トップに人生をコミットして有能な右腕として存在するナンバー2の存在は非常に重要となる。キングダムの名将たちにも有能な右腕の存在が描かれるシーンが多い。 その最たる例が、秦の六大将軍王騎の右腕を担い、共に戦場を渡り歩いてきた騰だ。 ユーモラスで個性的なキャラクターの騰だが王騎から絶大な信頼を得ており、部下からの信頼も厚く、王騎は死に際に軍の全権を騰へ委譲する。また、王騎の傍らで乱世を渡り歩いてきた経験を自らも自負している。騰の存在が王騎軍の強さを支えてきたことは間違いない。 また、山陽の攻略戦においては信を苦しめた勇将の輪虎。戦争遺児で死にかけていたところを廉頗に拾われた彼もまた廉頗の右腕として自らの人生を廉頗の剣として生きることにコミットし活躍する。 楊端和におけるバジオウ、藺相如(りんしょうじょ)における趙峩龍(ちょうがりゅう)・尭雲(ぎょううん)らも重要な右腕として描かれ、信にとっても羌瘣は自らにコミットしてくれている大事な右腕だろう。 8.人材配置 組織運営において、それぞれの適性や強みに合わせて人の配置を采配していくいわゆる適材適所は非常に重要である。有能な人材も適所に割り当てなければ強みが死んでしまう。 キングダムでは数々な困難な局面が訪れる都度、それに見合った人材を割り当てるシーンが描かれている。 例えば、韓を攻めていた秦はその隙をついて趙に馬陽を攻め込まれる。その迎撃に際して、嬴政と昌平君は圧倒的な武力を持つ蒙武を総大将にする思いきや、王騎を総大将に任命した。攻めが得意な蒙武に対して、迎撃戦のような守りが重要となる戦には守功双方を担える王騎が適任だと判断したのだった。結果、副将として従軍した蒙武は敵陣へ武力による突撃を図った末に謀略に嵌り絶体絶命の窮地に陥ることとなった。王騎は蒙武の救出に入った結果死すものの、秦は趙を退けることに成功する。 また山陽の武功により千人将へ昇格した信だったが、これまで隊の采配を担ってくれていた羌瘣が姉の仇討のために隊から離れていた間に全く戦に勝てなくなり降格の憂き目にあう寸前に陥っていた。そこに軍師学校で経験を積んだ河了貂が隊に戻ってきたことにより、河了貂の指揮によって成果を取り戻す。信の個の強さだけで武功を上げてきた訳ではなかったことが浮き彫りとなった。 多くの戦の中で、盤上の武将たちをそれぞれの個性に合わせてどう配置するかというシーンが描かれるキングダムの物語の中で、成果のために人材配置がいかに重要かを学ばされる。 9.組織階層 組織組成において階層構造をいかに形成するかが非常に重要となる。適切な組織階層が、教育や理念・戦略の連鎖・浸透を助ける。 物語の中で組織階層の構造が最初に語られるのは、信の初陣で魏と対決した蛇甘平原の攻略戦だ。国中から広く集められた兵卒たちは5人一組の伍を作り、その中のリーダーが伍長となり4人を率いる。伍を20組結集した100人を率いるのが百人将となり、そこから3人の百人将から形成される300人を率いる三百人将、千人将という具合に、武功に応じて率いる隊の規模が大きくなる。王弟のクーデターを鎮圧した際に共に闘った壁が千人将であることに末端の兵卒として従軍した信は驚くが、意に介さずに結果を出して一回の戦で百人将へと出世を果たす。 組織階層に対応して重要となるのが人事制度であるが、キングダムでは漫画の中で戦が終わる都度、「論功行賞」という武功の評定が王宮で行われ、武功に応じて財宝や土地・爵位・職位が与えられる。現代社会においても企業の人事・給与報酬査定により出世や基本給や賞与が評定されるシステムと同じであるから、ビジネスパーソンはキングダムの物語に共感を覚えるのだろう。また、羌瘣が同士討ちをした黒羊丘では、その罪を上官である信が咎められ、敵大将軍の慶舎(けいしゃ)を討ったものの懲戒処分として昇格を保留された場面も現代企業の評価制度・就労規則などに通じる。 信は下僕の出身ながら56巻の段階で将軍の前の五千人将まで上り詰めており、昇格する都度、武力だけでなく統率力や人材配置の術・人心掌握術などリーダーたる資質を高めていき、隊の中でもその考え方が連鎖浸透して隊全体が強化されていく姿が描かれている。信と同世代の王賁率いる玉鳳隊、蒙恬率いる楽華隊も、リーダーの昇格に応じて隊全体の組織階層が伸長し強い組織に変遷していく姿が描かれ、あらゆる角度から組織形成への学びを得ることができる。 そういった組織階層の重要性が多く語られるため、キングダムはビジネスパーソンに支持を受けるのだろう。 10.経営と執行の分掌 歴史活劇の漫画は戦場という現場での出来事ばかりにフォーカスすることが多いが、キングダムでは現場にいない王宮での出来事も多く描かれている。敵国の侵攻、攻略、またクーデターのような内部紛争、窮地が訪れる都度王宮の大臣や官僚たちが王と共にいかに対応するかを協議する姿や、その中にも内部の権力闘争によるジレンマも共に描かれる点は、現代経済の企業経営においても重なる部分が多い。 合従軍が侵攻してきた時にはいかに国防するかを王宮の武官たちが昼夜を問わず寝る間を惜しんでシミュレーションする姿が描かれていたり、中華統一のための趙国を降伏させるための戦略を軍総司令の昌平君が死に物狂いで考える姿なども印象的だ。昌平君は唯一の攻略策と思われた戦略を総大将の王翦へ授け、現場での不測の事態は王翦の現場判断に委ねる。実際に想定外の事態が起こるも、王翦はその知略を発揮し、現場レベルで代替戦略を打ち立てて趙を苦しめる。こういった運営サイドと執行現場との信頼関係・柔軟な対応は、経営と執行の分掌によるバランスの理想形であると言える。現場を無視した経営の押し付けや、執行の独走が起きると、組織全体の均衡が崩れて事態は失敗方向へ向かってしまう。 さらにビジネスパーソンからして胸アツな点は、王宮に留まる武官たちがいざという時には現場へ降りて戦い、そして圧倒的に強いというところだろう。嬴政の加冠の儀に乗じて咸陽で謀反が起きた際は陥落の瀬戸際で司令官の昌平君が配下の手練れと共に戦場へ出撃し、敵将のワテギを瞬殺し、信たちを驚愕させるシーンがある。現場でも現役武将に引けを取らずに戦える姿が、単なる机上論で戦略を講じている訳ではない根拠にもなるし、現場の信頼を掴む。 武官だけでなく文官も国力の向上に寄与している姿も物語の中で描かれている。元武官の昌文君は国内の治水事業に成果を出し、老臣の蔡沢は外交力で合従軍が発起した際には秦の真逆に位置する斉を辞退させたことで合従軍が戦力を秦へ一極集中できない状況を作ったり、最終的には王同士の会談をセッティングして他国の平定の暁には斉の自主降伏の密約を取り付けるのだった。こういった戦以外の国家運営努力においても王である嬴政を中心に実施されていることが描けれている点も、キングダムの魅力の一つだろう。 以上、キングダムがビジネスパーソンを魅了する10の要素でした!特に組織のリーダーやマネジメントに携わる人には学びが多い点がある程度ご理解いただけたかと思いますが、かいつまんで紹介しているため、ぜひ本編を実際に読んでもらいたいと思います。楽しく読めるビジネス本という観点からあらゆる立場のビジネスパーソンにおすすめです。
サムネイル画像: 作画引用・出典 キングダム (原 泰久) 集英社 キングダムから学ぶ人の心を掴み動かす方法!物語に散りばめられた名言・名シーンから現代社会に生きるための信念や心構えやビジネスに活かされるテクニックを心に刻もう。 キングダムがなぜここまで人を魅了するのか?その一つに物語で登場する様々なシーンに、人の心を掴み動かす多くの名言が存在しているからではないだろうか。 キングダムを描く時代は中国が7つの国に分かれていた群雄割拠の春秋戦国時代。武力がものを言う乱世の時代だ。国家を率いる王や、何十万もの軍を統率する大将軍が国の明暗を握る中で、どのように人心を掴み、動かすのか?その言葉を通して、特に仕事で人をマネジメントをする立場にあるビジネスマンや、高いポジションへキャリアアップを成し遂げたいと考える人は、あらゆるヒントを得ることができるだろう。 某人事コンサルティング企業やベンチャーIT企業もキングダムを必携推薦図書にしているなど、現代日本を生き抜く知恵をキングダムの名言から学び取るため至高の名言をまとめてみた。 ※物語のあらすじと共に紹介しているのでネタバレを含みます。 「奴らの見た夢を現実のものに変えてやれよ!!」信(3巻@王弟反乱編) 恨みにかられた山の民を味方につけた信の真っすぐな言葉が心を刺す 王弟成蟜(せいきょう)の反乱により咸陽を追われた嬴政。都を取り戻すための唯一の手段は屈強な山の民たちを味方につける他なく、山の民の王である楊端和(ようたんわ)へ協力の打診をしにいくのだった。 かつての山の民は当時の秦王「穆公(ぼくこう)」の分け隔てのない温情に報い、お互い協力し合っており、未来永劫に融和することを夢見ていた。しかし、穆公の亡きあとは秦に迫害・虐殺され、山の民の子孫は秦に対し強い恨みをもっており、山の民のもとに赴いた嬴政や信は捕らわれてしまう。秦への恨みを語り、信を処刑しようとした時に信が山の民に向けて放った言葉が状況を変える。 無念無念ってうっせェんだよ!! 大体一番の無念は夢見てたものが幻に終わったってことだろうが!! ・・・・・もしお前らが本気で死んだ奴らのことを想うのなら 奴らの見た夢を現実のものに変えてやれよ!! 秦国 信( 出典 キングダム (原 泰久) 集英社) 信の放った真っすぐな正論に思わず嬴政も「お前にしては上出来だ」とつぶやく。その後嬴政が楊端和に自分が中華を統べる最初の王となると志を語り、その想いを信じた楊端和が援軍となり咸陽を攻め、成蟜のクーデターを鎮圧することに成功するのだった。 映画キングダムでもハイライトシーンの一つとして描かれているこの場面。 先祖の無念に報復することが是と考えていた山の民に、先祖の夢を実現することこそが本当の報いであると説く信。それはキングダムの時代から2000年以上経った現代でも世界中で起こっている紛争やテロのような報復の連鎖に対して、本来目指すべき世界が何なのかを問いかけているようだ。 「勇猛と無謀は違う そこをはき違えると何も残さず早く死ぬ」縛虎申(7巻@信初陣(蛇甘平原)編) 信が初陣で出会った特攻の猛将縛虎申(ばくこしん)が信にかけた言葉。無謀のように見えた将が語った言葉だからこそ胸に刺さる 信の初陣で、信は麃公(ひょうこう)の配下の千人将であり、歩兵からは特攻好きのイカレた将校と噂される縛虎申の隊に所属することとなる。魏軍の戦車の前に秦軍は多大な損害を受けるが、信の活躍もあり敵将宮元(きゅうげん)のいる丘までなんとか行きつく。 縛虎申は信と共に突撃し、黄離弦(こうりげん)の矢を受け致命傷を負いつつも宮元と刺し違え、討ち取ることに成功する。 しかし、制圧した丘へ敵軍1000人が奪還に向かっており、わずか10人程の縛虎申兵は丘を明け渡し退却を進言するも、信が兵士の犠牲と縛虎申の命と引き換えに奪った丘を守るためには命をいとわず戦うと意気込む。そんな信へ 死に際の縛虎申はこう諭すのだった。 ・・・・・フフ 小僧 信・・・・・・いいか 信 勇猛と無謀は違う そこをはき違えると何も残さず早く死ぬ 皆と共に丘を降れ 命令だ 秦国 縛虎申(出典 キングダム (原 泰久) 集英社) 歩兵の命もいとわず突撃する無謀な将校に見える縛虎申だったが、勝利という目標達成のために命を懸ける場面と、引く場面をわきまえるこのできる知将でもあった。 戦地の混乱に動揺する歩兵に配慮し壁(へき)が退却を進言した際も「貴様は歩兵を助けるためにわざわざ戦地にきたのか?それとも魏軍に勝利するためにきたのか どっちだ!!」と檄を飛ばす場面や、多大な損害が起きている中でも麃公を信じ切る点、味方が多数死んだ時ほど無茶をすると評される点など、単なる無謀な将ではなく、勝利のために人を信じ・人の死を犠牲にせぬよう、最後は自らの命と引き換えに敵を倒すという強い信念を持った将であった。初陣でこのような将校と共に戦った経験は、信の考え方に大きく影響を与えただろう。 臆病と無謀の中庸にあるのが勇猛である。臆病では大義を成せず、無謀では命を落とす。感情にかられた無策な行動は無謀であり、大義を成すためには戦略に裏付けられた勇敢な行動が必要であると学ばされ、その考え方は現代の経済社会にも通じる点が多いのではないだろうか。 「あなたは誰よりも偉大な王になれます。」紫夏(8巻@政暗殺編) 心を無くした政を蘇らせ、中華統一を目指す王としての信念の礎となった紫夏の言葉 政は王の血統の中でも位が低かったことから幼少期に母親と共に趙の人質となっていた。趙はかつて秦に戦で敗北した際に捕虜を40万人生き埋めにされるという凄惨な出来事があり、その恨みから秦王の子である政は趙民からひどい虐待と迫害を受けていた。 そのため政は感情と感覚を失い、腕に矢が刺さっても痛みを感じないほどであった。 秦王が崩御したことにより政は趙から脱出を図るが、秦の後継者となった政を生かすまいと趙の刺客が追走する。そこを守ったのが趙の闇商人である紫夏(しか)だった。人から受けた恩は次の誰かに受け継ぐよう父から教えられていた紫夏は命を懸けて政を守り、その姿を見て政は次第に失った心を取り戻していく。 紫夏は秦の国境目前で敵の刃に倒れ、絶命の間際に政へこう伝える。 あなたは生まれの不運により およそ王族が歩まぬ道を歩まされた・・・ しかし 逆に言えばあなたほどつらい経験をして王になる者は他にいません だから きっと あなたは誰よりも偉大な王になれます 趙国 闇商人 紫夏(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 紫夏の最期の言葉が嬴政の中華統一への信念の礎となり、秦を率いる誇り高き王への成長を遂げたのだった。 自らつらい経験やどん底を味わったからこそ、あらゆる困難に立ち向うことができ、人の痛みが分かり、人の心を掴むことができる偉大な人間になることがかなう。苦難・困難が人を成長させることを教えてくれるかけがえのないメッセージだった。 「仲間の力込みで、、お前の力だ。信、、、 」尾到(14巻@馬陽攻防編) 強さは一人だけの力ではない。自分を信じて賛同し協力してくれる仲間たちの力が結集することで大いなる夢が近づく。 王騎を総大将とする秦軍は馬陽で趙軍を防衛するための激戦を繰り広げる。信は百人将ながら飛信隊の仲間たちの支えもあり、敵将軍の馮忌を討ち取るなど大きな武功を収める。 そんな中、秦の宿営地に武神・龐煖が急襲し、多くの死傷者が出る。龐煖に果敢に立ち向かう信であったが歯が立たず討たれる間際、飛信隊の仲間たちが信をかばい救出する。そして初陣から信を支えてきた同郷の尾到が瀕死の信を背負い混乱を逃れ、敵襲が追走するも安全な場所へ避難し信は命拾いする。 逃走時に深手を負っていた尾到は信に「本気で将軍になれると思うか?」と問いかける。いざ戦場に出ると下僕が将軍になるのはまさに”夢”みたいな話で、どれだけ死地を乗り越えればいいのか?一度死んだら全員それで終わりだと。 そして尾到は続ける、 だけどお前は龐煖相手に生き残った 隊の皆が命をかけてお前を守ったからだ 命令でもないのに命がけで、、、 これはふつうのことじゃねェ、普通の隊長にはできねェよ信 だから思ったんだ。信は本当に将軍になれるってな。 名だたる大将軍達、、、あの王騎将軍でさえきっとこういう場面を繰り返して来たんだと思うぜ、、 仲間の力込みで、、お前の力だ。信、、、 秦国 飛信隊 尾到(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 尾到は今回の戦で多くの死者が出たが、俺たちは戦をしているんだから死人も出る、それで下を向く必要はない、みんなお前と一緒に夢を見てェと思ったんだ と信を励ます。 それでいいんだ、、、これからお前はそうやって 大勢の仲間の思いを乗せて天下の大将軍にかけ上がるんだ 絶対なれるぞ、、、信、、、 秦国 飛信隊 尾到 尾到はそう語ると眠りにつき、もう二度と起きることはなかった。 自分一人の力ではなく、同じ夢を追いかけることができるそれぞれの力をもった仲間たちの協力があるからこそ夢を実現できる。そういった仲間を惹きつける魅力があることが信の最大の武器であることを伝えた尾到の最期の力強いメッセージだった。 自分一人ではできないことも、それを実現させてくれる多くの仲間の力があるから夢が現実のものとなる。組織戦で戦う現代ビジネスにおいても、大義を成すには人を魅了し、人を率い、人の力を借りることの重要性を教えてくれる尾到の尊い最期であった。 「だってそれは この期に及んで一発逆転の好機が生まれたって話だろ! 」信(19巻@山陽攻略編) ピンチと捉えるかチャンスと捉えるかは自分次第。信の無邪気だが熱い言葉が老いてもまだ成長できることを教えてくれる。 秦が魏の山陽へ攻める際に総大将に任命された老将蒙驁(もうごう)の前に立ちはだかったのは、かつて一度も勝つことができなかった因縁の相手であり猛将の廉頗(れんぱ)だった。蒙驁は戦の相手が廉頗と知り、心の中で動揺する。 蒙驁は戦の前夜に身分を隠して宿営地を徘徊する癖があり、そこでたまたま出会ったのが信であった。信に「過去一度もケンカで勝てなかった相手と再び戦う。自分は老いたが、相手はむしろ猛々しい。深刻じゃろ?」と相談する。 すると信は悩む蒙驁を意に介さずこう言うのだった。 悩む意味が全っ然わからん だってそれは この期に及んで一発逆転の好機が生まれたって話だろ! ケンカってのは最後に立っていた奴の勝ちだ 次勝って勝ち逃げしてやれよ!そうすりゃじーさんの総勝ちだ! 秦国 信(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) また負けるかもと後ろ向きに考えるより、勝つ機会が訪れたチャンスだと前向きに捉えるべきだと説く信。蒙驁はこの言葉をモチベーションに自信を持って戦い、廉頗の一騎打ちで実力を上回る力を発揮し、片腕を失うものの秦を勝利に導いた。蒙驁が初めて廉頗に勝った瞬間であった。 現代社会でも負け癖がつくと、好機を危機と感じてしまうことがある。しかし、そういった状況であるからこそ地力を超える成長を遂げ、大きな成果を手に入れることができる。ピンチこそチャンスであることを教えてくれる場面だった。 「私は”絶対に勝つ戦”以外興味はない」王翦(21巻@山陽攻略編) 「やること」より「やらないこと」を選ぶ。知略に富んだ王翦の不戦のポリシーに勝率を高める原理原則を学ぶことができる 蒙驁の副将として山陽に参戦していた王翦(おうせん)は、廉頗の四天王のうち中華十弓の一人である姜燕(きょうえん)を迎え撃つこととなる。王翦は壁に五千の兵を持たせ囮とし姜燕(きょうえん)を誘い込み、それに気づかず壁軍を取り囲んだ姜燕軍をさらに王翦軍が取り囲む。しかし、それを先読みしていた廉頗自らが出現し王翦軍を包囲するのだった。 王翦を挑発する廉頗であったが、王翦は誘いに乗らず絶対に勝つ戦以外に興味はないと言い残し退却するのだった。 私は”絶対に勝つ戦”以外興味はない 秦 将軍 王翦(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 王翦は退却後、廉頗の急襲をさらに読んでいたかのように岸壁に築いていた天然の要塞に籠ってしまい、魏は手出しができなかった。 その後、蒙驁の本陣が廉頗に陥落されかけるが、桓騎が敵本陣を落としたのと王翦軍が無傷で残っていたことが決定打となり、最終的に廉頗は負けを認め和睦することとなった。 孫氏兵法の基本にもある勝てる算段のない戦はしないという原則。様々な戦略や戦術、経験則から勝利への成功実現性をいかに高められるかを追求し、敗北の可能性があれば”やらない”という考え方は現代のビジネスにも通じる部分が多いのではないだろうか。 「そうじゃねェだろ 俺達はみんなてめェの足で立って戦ってんだ」信(22巻@山陽攻略編) 人は自らの意思で、自らの力で生きている。信を苦しめた勇将輪虎へ送った言葉がアツすぎる。 魏 山陽攻略において信を最も苦しめた武将が戦いの天才輪虎(りんこ)であった。 戦争遺児であった輪虎は廉頗に拾われてその才覚を開花させ、「廉頗の剣」として戦場を巡ってきた。幾度となく信を苦しめたが、最後の決戦で信に対し、自分が廉頗に拾われたのは”天が与えた運命”と語る輪虎。 天に寵愛される武将は一握りその一人である廉頗に天が出会わせた剣がこの僕だってねだからこんなところで負ける訳には・・・ 魏 将軍 廉頗四天王 輪虎(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) しかし、 信はその考え方を正す言葉を投げかける。 下らねェ さっきから聞いてりゃ それじゃまるで全部が天任せみてェじゃねェかよそうじゃねェだろ 俺達はみんなてめェの足で立って戦ってんだ 今のお前だって廉頗の剣であるべく命がけで戦いまくって来た結果だろうが! 秦国 信(出典 キングダム (原 泰久) 集英社 ) 天命に生きたと自らを評する輪虎に、自分の意思・足で生きてきたんだろ?と正す信の言葉には、武将として凛とし強く気高い輪虎を敵ながら尊敬する想いが感じられる。 強力なライバルとの戦いが、信を心身ともにさらに強くするのであった。 人は自らの意思で選択し、自らの足で生きているんだという信のメッセージは、自分の人生を決めるのは運命でも他人でも環境でもなく、自分自身なんだという原理原則に気づかされるパワーのある名言だ。 「お前には、たまたまそこから引き上げる人間が周りにいなかっただけだ」信(27巻@合従軍侵攻編) 恨みから虐殺を繰り返してきた万極(まんごく)の死に際に送った信の言葉に胸を打たれる! 万極は過去長平の戦いによって秦軍六大将軍だった白起(はくき)により生き埋めという凄惨な殺された方をした40万人の捕虜の戦争遺児たちで構成され、秦への強烈な恨みから虐殺を繰り返してきた。 自らも戦争孤児である信は、乱世の時代では自分も含め誰しもが万極のようになってもおかしくない、ただそこから引き上げてくれるのは仲間の存在がいなかった万極は運が悪かったと憐れんで、もう楽になれと引導を渡す。 違う!! 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